No.261・『THESONGWRITERS2nd Season 』 @佐野元春(4)

kneedrop2010-09-23

A world of 1200 letters 『1200字の言葉の世界』−
「普遍の祈り」 DJ / KNEEDROP つづいてます。

僕は言葉と音楽に真剣に向かい合っている同時代の、すべての、同業のソングライターたちを擁護する。「擁護」という言葉は傲慢か?であるなら、「同情」と言い換えてもいい。
かつての時代、ポップ音楽には夢があった、という。
そのポップ音楽からファンタジーが消えて久しいと言われる。しかしポップ音楽におけるファンタジーとは歴史が示してきているとおり、ソングライターが創りだすものではなく、リスナーが感じ取るものなのだ。多分。時代の新しいリスナーが新しい音楽を求め続けるかぎり、そこに新しいファンタジーが生まれてくるはずだ。
またある人は、ポップ音楽にかつてのパワーがなくなった、という。それは正しい。
60年代の人々が経験したようなビートルズウッドストックの現象は、もうこの先起こらないかもしれない。しかしそれは、ポップ音楽自体の魅力が失せたわけではなく、ポップ音楽の変容(Transformation)なのだ。
ポップ音楽は、レコーディング技術の変化、流通の変化に沿って、どうにかサバイバルしようと、日々、その形態を進化させている。サナギはサナギのままではいられない。我々はその変容の現場に立ち会っている。変容の現場を目撃し、愉快につきあっていこうとしている。

 僕は言葉と音楽に真剣に向かい合っている同時代の、すべての、同業のソングライターたちを擁護する。既成を押しつけるレコード会社や保守に凝り固まった恐竜たちに悪態をつきながら、どうにか意味のある
一曲を生みだそうとしている、同時代の、すべての、同業のソングライターたちを擁護する。
この変容を見つめ、この変容につきあいながら、今もどこかせまい部屋の中で言葉/音楽と愉快な格闘をしているソングライターがいるかもしれない。
ハっと息を飲むような曲を作り上げ、明日になれば、何百万枚もの売り上げを記録するような、そんなことを夢に見ているソングライターもいるかもしれない。
僕もまた、そんなソングライターのひとりとして、日がな、唄のメロディーやそこで唄うべきストーリーについて考えている。そして願わくば、ごきげんなポップ・ソングを紡ぎたいと思っている。
ごきげんなポップ・ソングとは何か。それは多くの人達から愛される唄のことだ。
しかしたいていの場合、それを意識して成功した試しはない。


ソングライターたちの'FAQ'はいつもきまってこうだ。
ソング・ライティングをうまくする方法があるだろうか?」、「ソング・ライティングに何かルールのようなものはあるのだろうか?」。曲作りのルールなどどこにもありはしないから、結局のところ自分でやるしかない。
もしあるとしたら、それは、「聴き手にはおもしろがってもらえ。同業者からは盗まれるように作れ。」ということだ。(了)           佐野元春 : オフィシャル・ファンサイト - Moto’s Web Serverより抜粋。




The Essential Cafe Bohemia(DVD付)

The Essential Cafe Bohemia(DVD付)